パチンコ、スロットにおける乱数の用途
パチンコ、スロットの大当たり抽選おいて、乱数は最も重要な要素であるというか、抽選そのものだ。
たとえば、パチンコの大当たり確率1/319を抽選する場合、1から319までの乱数を生成して、1や7などの特定の1つの数字が選択された場合に当たりを発生させればよい。
ただし、実際には319という数字はコンピューターには扱いにくく、0~65535(2の16乗通り)の乱数を生成して、そのうち大当たりの数字を205個にすることで205/65536=1/319.6878を抽選している。
確率を1/319.69としている機種が多いのはこのためだ。
乱数はどのように生成しているのか
パチンコ台では、スタートチャッカーに玉が入賞したタイミングを数式に与えて、計算結果として乱数を生成している。スロットの場合はレバーオンだ。
よく、1から319までのルーレットが高速に回っていて、スタートチャッカーに入賞した瞬間の値が採用されるような動作が例示されているか、これは概念としては分かりやすくても内部的な動作としては正確ではないと思われる。
数式に与えられる「タイミング」とは何かというと、コンピューターの動作ステップ数である。
パチンコ台やゲーム機を含めたコンピューターのCPUはクロックと呼ばれる高速なタイミングに合わせて動作しており、パチンコ用CPUの場合は1秒間に1,200万回ステップ程度の処理を行う。
非常に高速であるように聞こえるが、今時のパソコンやゲーム機はこの何百倍も高速なクロックで動作している。(「Core i7 3GHz」みたいな数字のこと。パチンコ抽選用CPUのクロックは12MHzらしい)
この動作ステップ数が内部的にカウントされていて、スタートチャッカーに入った瞬間、レバーをたたいた瞬間のカウントを乱数生成用の数式に渡し、乱数が生成される。
このような乱数生成方式において、乱数生成の基になる数字を乱数の種(たね、シード)と言い、シードが変われば生成される乱数列も異なるものになる。
カウンターは1秒間に1,200万回もカウントアップするので、特定のシードを狙い打ちすることは無理だ。もしカウンターが16bit(最大65,535)で管理されているのであれば、カウンターが1周するのに要する時間は、約0.005秒である。
したがって、抽選に使用される乱数は、パチンコで実施される抽選回数に対しては十分な品質(ランダム性)であり、現代のパチンコ機で体感機による大当たり乱数直撃は不可能だと思われる。
玉が釘に絡んでいるうちに、カウンターは何百周もしているのである。
なんなら、乱数を生成せずにカウンターの値をそのまま採用しても、ほぼ乱数と言える値が得られる。
打ち手が任意のタイミングでレバーを叩けるスロットでも同様であり、大当たり乱数のタイミングが分かったとしても、1週0.005秒のルーレットでは、大まかに狙うことすら不可能だ。
北電子の乱数に関する特許
北電子が乱数の生成方式に関して特許を出願したのは有名な話である。
まず北電子の乱数生成方式が特許として出願されていることは事実である。
「特願2003-094458 乱数幅変更機能付き遊技機」として出願されていることがこのサイトで確認できる(文書の直リンクはないので検索してほしい)。
一方、あまり知られていないが、この特許出願は拒絶されているので、北電子はこの特許を取得していない。
この特許の存在に尾ひれがついて、ジャグラーでは「独自の乱数生成方式」による出玉の波が実現されているなどという話が出回っているのではないかと思われる。
出願された特許の概要は次のとおりである。
■従来の抽選方式
この出願では、乱数の範囲を16383までとして、そのうち一部の数字が得られたときにボーナスや小役が当選させる方式を従来の方式としている。従来の方式では乱数の最大値は全設定同じで、高設定ほどボーナスや小役が当たる数を増やすことで確率を上げている。
■北電子が出願した特許の方式
ボーナスや小役の当たり数字は全設定共通。
乱数の最大値を高設定ほど小さくすることで、ボーナスや小役の確率を上げる。
ここまでの話であれば、どちらの方式でも高設定ほど当たりやすいという点では同じであって、どちらかの方式が荒れやすいとか連荘しやすいなどの違いはない。
ただし、この分母(乱数の幅)の変更が設定変更時にのみ適用されるのであれば問題はないと思われるが、出願書類では「所定回数の遊技」や「出率」に応じて「乱数幅変更フラグ」が送信されると記載されている。
もし本当に営業開始後に抽選の分母の変化が実機に実装されているとしたら、出過ぎた台の大当たり確率を抑えたり、出玉が足りない台を当たりやすくしたりすることができる。
つまり、確率を意図的に収束させることができてしまう。
北電子は設定ごとのボーナスや子役の当選分母を共通化して、プログラムの容量を節約する効果が期待できると言っているが、逆に分母を変化させるためのコードが増える気もする。
こんな制御をしなくても、長期的に見れば出率は設定どおりに落ち着くが
打ち手は連荘の後のハマリや、ハマリの後の連荘を想像して台を選ぶ場合が多々ある。北電子の意図は不明だが、このような打ち手の期待に応える目的かもしれない。
あるいは店が1日、1台単位で出率を設定どおりに収束させたいのであれば役に立つ制御であるとは思われる。
特許出願が拒絶されているのでどうでもよいことではあるが。
コメント